周りの子が英会話スクールに通い始めたり、英語の聞き流しをしていたりすると、わが家も早く始めなきゃと焦る気持ちが生まれるものです。グローバル化が進む現代、英語ができるに越したことはありません。
しかし、早期教育を急ぐあまり、もっとも大切な「土台」を疎かにしていませんか?その土台とは、私たちが日常で使っている日本語、つまり「母国語」の力です。
今回は、なぜ英語の前に母国語の語彙力を鍛えるべきなのか、その理由と思考力への影響について解説します。
1. 言葉は「思考のOS」である
私たちは物事を考えるとき、頭の中で言葉を使っています。これを「内言(ないげん)」と呼びます。
言葉の数が少ないということは、思考するための材料が少ないということです。いくら英語の発音が良くても、その中身となる「考える力」が育っていなければ、複雑な議論や深いコミュニケーションは成立しません。
母国語で深く考えられないことは、英語でも深く考えることはできません。母国語という「思考のOS」を最新の状態にアップデートすることこそが、将来の英語学習を支える最強の武器になります。
2. 語彙力の差が「思考の深さ」を分ける理由
語彙力は、世界を認識するための解像度です。
例えば、花の色の変化を見て「きれい」という言葉しか持たない子と、「だんだん色が薄くなって、透き通るような紫になったね」と表現できる語彙を持つ子では、観察の深さが全く異なります。
細かいニュアンスを理解し、言葉にできる力は、以下の能力に直結します。
- 論理的思考力:物事の因果関係を整理する力
- メタ認知能力:自分の状況や感情を客観的に捉える力
- 共感力:相手の言葉の裏にある微細な感情を読み取る力
これらはすべて、非認知能力の核となる部分です。
3. 早期英語教育と母国語重視の比較
英語をいつから始めるか迷っている方のために、それぞれのメリットと意識すべき点を整理しました。
| 視点 | 早期英語教育に偏った場合 | 母国語の土台を固めた場合 |
| 学習の焦点 | 発音、リスニング、英単語の暗記 | 語彙の多様性、文脈理解、読解力 |
| 思考への影響 | 翻訳がメインになりやすく、思考が浅くなるリスク | 自分の意見を整理し、論理的に伝える力が育つ |
| 将来の伸びしろ | 幼少期は早いが、抽象的な会話で壁に当たりやすい | 土台があるため、後から英語を乗せた際に急成長する |
| 親の役割 | 教材の提供、レッスンの送迎 | 豊かな対話、読み聞かせ、感情の言語化 |
4. 母国語の力を伸ばすための具体的な関わり方
英語教室に通わせる前に、今日からお家でできる「思考の投資」があります。
質の高い読み聞かせを続ける
絵本は日常会話では使わないような、美しい表現や難しい言葉の宝庫です。物語を通じて「なぜ主人公はこう思ったんだろう?」と問いかけることで、思考を深める練習になります。
感情に名前をつける
子供が泣いたり怒ったりしたとき、「イライラしたね」「悔しかったんだね」「悲しいんだね」と、感情を細かく言葉にしてあげましょう。自分の心を言葉で捉える力は、情緒の安定と深い思考を助けます。
大人が豊かな言葉で話しかける
「あれ持ってきて」ではなく「台所にある、青い取っ手のついたマグカップを持ってきて」と具体的に話すだけでも、子供の語彙は確実に増えていきます。
5. まとめ:急がば回れ。根っこを太く育てる
英語教育を否定する必要はありません。大切なのは「バランス」です。
家の中が英語の聞き流しばかりになり、親子で日本語の深い対話をする時間が削られてしまうとしたら、それは将来的に大きな損失かもしれません。
まずは母国語という「根っこ」を太く、深く育てること。その根っこがしっかりしていれば、いつか英語という「枝葉」を伸ばそうとしたとき、驚くほどの速さで成長し、大きな実を結ぶはずです。


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